東京地方裁判所 平成6年(特わ)3278号 判決
本店所在地
東京都板橋区徳丸三丁目一番四号
太陽管財株式会社
(右代表者代表取締役 櫻井耕一郎)
本籍
東京都板橋区赤塚七丁目一二八三番地
住居
同都同区赤塚七丁目二四番五号
会社役員
櫻井耕一郎
昭和一八年一月一九日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人鈴木薫各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人太陽管財株式会社を罰金一〇〇〇万円に、被告人櫻井耕一郎を懲役八月に処する。
被告人櫻井耕一郎に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人太陽管財株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都板橋区徳丸三丁目一番四号に本店を置き、建物及び財産の警備とその保障等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成五年五月二四日以前は五〇〇万円)の株式会社であり、被告人櫻井耕一郎(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の雑給を計上するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇五六七万四一九八円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年六月一日、東京都板橋区大山東町三五番一号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四三六二万六七三一円でこれに対する法人税額が一五五一万七九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第四一七号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三八七八万五九〇〇円と右申告税額との差額二三二六万八〇〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三二二三万七一一二円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年五月二七日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六五三一万三〇三二円で、これに対する法人税額が二三六九万五二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四八七九万一七〇〇円と右申告税額との差額二五〇九万六五〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書四通
一 飯田徳、平林邦彦、小林武治、戸田斉、西田博及び坂田光男(二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の雑給調査書、福利厚生費調査書、賞与引当金繰入限度超過額調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書
一 検察事務官作成の税務署の所在地等についての捜査報告書
一 登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿(役員欄)謄本
判示第一の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第四一七号の1)
判示第二の事実について
一 検察事務官作成の雑給についての捜査報告書
一 大蔵事務官作成の賞与引当金繰入限度超過額認容調査書
一 押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)
(法令の適用)
一 罰条
1 被告会社
判示第一及び第二の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
2 被告人
判示第一および第二の各所為につき、法人税法一五九条一項
二 刑種の選択
被告人につき、懲役刑
三 併合罪の処理
1 被告会社
刑法四五条前段、四八条二項
2 被告人
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)
四 刑の執行猶予
被告人につき、刑法二五条一項
五 訴訟費用
刑訴法一八一条一項本文
(量刑の理由)
本件は、建築現場の警備を主たる事業内容とする被告会社の社長であった被告人が、架空の雑給を計上するなどして、二事業年度にわたり、合計四八三六万円の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は通算約五五・二パーセントである。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できないところである。
他方、被告人は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件二事業年度分の法人税及び地方税の各本税を完納し、各附帯税の一部を納付し、残余を分割して納付中であり、近いうちに完納の見込みであること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。
当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 被告会社・罰金一三〇〇万円、被告人・懲役一〇月)
(裁判官 安廣文夫)
別紙1
修正損益計算書
〈省略〉
別紙2
修正損益計算書
〈省略〉
別紙3
ほ脱税額計算書
会社名 太陽管財株式会社
(1) 自 平成3年4月1日
至 平成4年3月31日
〈省略〉
(2) 自 平成4年4月1日
至 平成5年3月31日
〈省略〉